アダルトビデオ女優 林由美香と、監督の平野勝之はかつて不倫関係にあり、その頃、二人で自転車で北海道まで行く、という計画を立てた。
この不倫自転車旅行は、アダルトビデオとして発売されたが、映画館でも公開された。
また、「自転車不倫野宿ツアー」という本にもなっている。なっているというか、監督が書いたんだけど。定価800円だけど、アマゾンではプレミアがついてます。もちろん、ウチにあります。欲しい人にあげようかと思ってますが、どうしたものか。

当時、林由美香は、26歳。18歳でグラビアを始め、20歳でAV進出、その美少女ぶりとハードなカラミで大人気になるも、親バレで引退、しかしまた舞い戻り、AVのほか、ピンク映画でも活躍した。3本立てのうち、必ず一本には名前が出ているくらいの仕事ぶり。
主演というよりも、いわゆる脱ぎ要員で、3人いれば3番目にクレジットされるような位置だったが、主演を食うことも、また演技のできない主演に代わって映画を成立させることもしばしばあった。

一方平野は、監督してデビューしたときには、すでに林由美香はビッグネームで、ペーペーの平野が撮影する機会はなかなかこなかった。しかし、段々と名前が売れるにつれて撮ることができ、そしてつきあい始め、不倫自転車旅行へとつながっていく。

この旅行の後、二人は別れることになる。撮影旅行中、けんかがあったりトラブルがあったりするが、それらを撮っていなかった平野を、由美香は「平野君、監督失格だよ」と怒る。

別れたとはいえ、同じ業界で仕事をしていることもあり、まったく音信不通になったわけではなかった。といっても、一人のオトコと半年もたない、せいぜい3カ月くらいで駄目になってしまう由美香の愚痴を聞いてやる、ということもよくあったらしい。

そんな由美香の誕生日を祝おうと彼女の住む幡ヶ谷のマンションにやってきた平野と弟子だったが、インターホンを押しても応答がない。ドタキャンか、と思うが、それは林由美香が最も嫌うことで、仕事でも今までそんなことは一度もなかった。

不安に思った二人は、ラーメン屋「野方ホープ」のオーナーとして知られる母を呼んで、鍵を開けてみる。そして・・・・


林由美香が亡くなったのは、2005年6月26日22時ころ。翌々日に発見され、その死はスポーツ新聞、週刊誌の格好のネタとなり、あることないこと書き立てられた。葬儀が創価学会式だったために、それもまた色々とネタになった。

しかし、まだ若かった女優が突然に酒と睡眠薬で亡くなってしまったということ、そして、そんな娘を亡くした親の悲しみは、他のことにたとえようもないこと。

そこにあるのは、そういった、動かしようのない、厳然とした事実である。


彼女の墓は、柳下毅一郎のブログによると、西高島平霊園にあるらしい。ちょっと遠いけど、グーグルマップで場所はわかったので、暖かくなったら行ってこようかと思う。

東京でもまだこれからやる劇場があるし、全国でもまだ上映するところがあるようなので、アダルトビデオに興味のない人も、是非。これは、亡くなってしまった者に向けた、永遠に伝わることのない愛の証である。

DVDじゃなくて、劇場で、是非。
監督失格 Blu-ray(特典DVD付2枚組)

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コメント

Suica
2012年2月4日0:12

こんにちは。実は権之助さんの記事で興味をひかれ、観に行ってきました。私もDVDより「劇場で」と思います。いい作品でした。ご紹介、ありがとうございました☆

権之助
2012年2月4日1:57

こんばんは

すぐに観に行くとは、フットワーク軽いですね。

気に入っていただけたようで、拙い語彙で頑張って書いた甲斐がありました。

そう、喪失と再生です。
どうやって喪失から立ち直って、自分の人生を生きていくか……
私にとっても、大事なテーマです。

シゲ
2012年2月5日12:33

この作品の事は知りませんでしたが、林由美香は良かったですよね。
あんまりおおっぴらには言えないけど。でも、そんなにたくさんピンク映画に出てたんですか。知らなかった。

権之助
2012年2月5日23:28

亡くなる前の数年間は、ピンク映画には欠かせないヒトになってました。
でも、ほとんどの映画は数年経ったらジャンクされちゃって、観ることができないんですよね。残念。

大阪では「監督失格」はもう終わっちゃったんですよねー、なので、DVDが出たら是非ご覧ください。と、軽々しく薦められるような映画ではないんですけど。

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